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2013/06/24

[Event Repo] 2013/06/23 大阪 三木楽器心斎橋店 「深野塾第二講!夏の特別講習会」
三木楽器心斎橋店のB1Fで開催されたFreedom Custom Guitar Research(以下:フリーダム)の代表である深野真氏のギター&ベースクリニック「深野塾第二講!夏の特別講習会」に行って来ました。前回のクリニックは生憎スケジュールが合わず断念しましたが幸い今回はゆっくり拝見することができました。実際どんな内容だったのかレポートしたいと思います。

「深野塾第二講!夏の特別講習会」

まずは深野さんからの挨拶から始まり、フリーダムという会社はどういう会社なのかという説明から始まりました。そのお話の中で印象的だったのが、まずフリーダム製のギターやベースには100年保証というとてつもない期間の保証が付いているということです。この保証については木部のみ対象で、ナットなどの消耗品は対象外になりますが、例えばネックが反り過ぎて調整すら不可能な状態になった場合、新品のネックと交換するなどの対応が100年間受けられるというだそうです。つまい言い換えると、100年使い続けても大丈夫なように作っているそうです。自分たちが制作しているものに対し絶対の自信を持っているからこそこういう事ができるのではないでしょうか。自社について語る深野氏には、そういった確固とした理念を感じました。

「深野塾第二講!夏の特別講習会」

フリーダムは自社製品を多く作っていることでも有名ですが、その中でも有名なのがオリジナル製ステンレスフレットについて深野氏から説明がありました。まずこのステンレスフレットを制作する理由になったのが意外で、「ステンレスフレットが嫌いだったから」だそうです。一聞すると矛盾しているように思えますが、ステンレスの錆びにくい特性はとても素晴らしいが、ニッケル製のフレットに比べて硬過ぎるので音も硬質なものになってしまうので、ニッケルのように柔らかいステンレスフレットが作りたかったというのが真意だそうです。個人的な好みとして、ギターに比べ高い倍音部をあまり含まずアタックの遅いベースにとっては硬いステンレスは利点が多いように感じますが、ギターになると厳しいように感じます。そういった意味ではフリーダム製ステンレスフレットは特にギターにおいてうってつけではないでしょうか。

「深野塾第二講!夏の特別講習会」
「深野塾第二講!夏の特別講習会」

そして今回のクリニックで私個人が最も聞きたかった「トルクマネージメント」の話題に。トルクマネージメントとは、簡単にいえばボルトオンのネックの締め付け具合で出音が大きく変化するので、それを自分の好みに合わせて自在に調整する事です。実際に自社製のベースやギターで実演されてらっしゃっていたのですが、実際に聞いてみると確かに面白いほど変化していました。深野氏曰く、ボディとネックの接点にほんの少し圧力が加わるか加わらないかの「ゆるめ」の状態をゼロポイントとし、そこからどこまで締め付けるかで出音調整するとの事。ゆるめのセッティングではアタックが柔らかい、いわゆる「いなたい」音になり、しっかり締めるとアタックが早くコードの分離の良い音と変化していました。個人的に面白かったのがサステインで、前者の方が長く後者の方が短く感じた所です。深野氏によると、タイトに締めると弦の振動がボディまで伝わりやすくなることは、言い換えればボディが振動を吸収することになるらしく、だから最初のアタックは強くなるが相対的にサステインが短くなるのだそうです。

「深野塾第二講!夏の特別講習会」

そしてこのトルクマネージメントをより効果的にに使いやすくしたのが「ARIMIZO & One Point Joint」で、ボディとネックの接合部を「アリ溝加工」することで強度を高くし、ボルト一本でトルク調整を行えるようにした画期的なシステムを紹介されてました。このシステムは実際私も過去にDulakeで試したことがありますがとても使いやすく便利でした。六角レンチ一本で出音を変化させられるこの機能を深野氏は「第三のトーンコントロール」と仰ってました。録音したオーディオファイルの倍音の波形を解析し立体的にしたものを比較されるなど、トルクマネージメントによる音色の違いを視覚的にわかりやすく説明されてらっしゃいました。

「深野塾第二講!夏の特別講習会」

フリーダムのセミオーダーシステムについてもお話をされてらっしゃいました。フリーダムでセミオーダーをすると早くても4ヶ月、現在は他の注文が多いので完成するまで5ヶ月ぐらいかかるそうです。この最低4ヶ月というのは、木材は加工するたびに反るなど形状の変化がその都度発生するらしく、それを安定させるための期間が必要だそうです。そのセミオーダーをする際のネックや色のサンプルを今回は持参されてらっしゃいました。このサンプル用ネックは実際に弦を張って握った時の感覚を再現するため若干太くしてあるそうです。深野氏のお話で印象的だったのが、「同じような素材を同じ技術を用いて制作しても個体差は出ます。しかし当社はその『当たり外れ』の非常に少ないメーカーだと自負しています」との事でした。

「深野塾第二講!夏の特別講習会」

フリーダムは楽器本体だけではなく、メンテナンス製品なども自社製のものを多く制作しており、特にレモンオイルは自社の工房内で実際に制作されているようです。このオイルもスタッフの方にブラインドテストしてもらい、その中から厳選したものだそうです。その他換装するだけでアタックが早くなるジョイントプレートや機械部の滑りを良くするシリコングリスなど、様々な製品を展示されてらっしゃいました。こういったひとつひとつのこだわりがフリーダムというブランドの核になっているんだと感じました。

クリニックが終了した後、今回のクリニックに合わせて入荷したフリーダムの新製品「RHINO」の試奏もしてきました。弾いてみた感想は、上質な5弦パッシブジャズベという感想でした。アクティブベースなのですがあくまでもパッシブで音作りをし、それの延長としてプリアンプで味付けをすることを目的として制作されたそうで、営業部長の方が「自分が使いたい多弦ベースを具現化したもの」と仰ってました。同氏曰く、「一般的な5弦ベースは5弦の音色に違和感を覚えることが多く、それを極力なくすためあれこれ追求した結果がこれです」との事。営業部長さんとの会話では、もっと5弦の違和感をなくしたいという気持ちと、現時点ではこれが精一杯という気持ちという気持ちが混ざっておられました。こういった今の気持ちを包み隠さず仰られる正直な所にとても好感を持ちました。

この他に、ネックの反りについてやそれの調整方法を詳しく説明されてらっしゃいました。フリーダム製のギターやベースは、基本的にチューニングしたままの状態で保管してもらうことを想定しているので、基本的にチューニングは合わせた状態のままで良いとの事。ただし夏場の車内など気温が高い所にどうしても置いておかなければならない時は半回転ぐらいペグを緩めて欲しいとの事でした。演奏していない時は弦を緩めるかどうかという議論をよく見かけますが、フリーダムの場合は基本緩めなくて大丈夫なようです。

自由な発想のもと真っ直ぐに理想のギターとベース像を常に追い求めている。そんな自由さと実直さをフリーダムというブランドに感じました。実質的に一生涯保証がついてくる国産のギターやベースを探してらっしゃる方は一度フリーダムを検討してみてはいかがでしょうか?決して期待を裏切るような事はないと思います。

余談ですが、帰宅後私も実際にトルクマネージメントでどれほど音色が変化するのか比較してみることにしてみました。使用機材はDingwall Z3-6で、ネックジョイント部のボルトをそれぞれゆるめときつめとし、プリアンプのEQはフラットの状態にしE弦開放を中指で弾いたものを録音してみました。そのオーディオファイルと3D解析図を公開します。それぞれを比較してみるとアタックやサステインの特性の違いがわかるかと思います。

ボルト:ゆるめ (Dingwall Z3-6)
オーディオファイル - ボルト:ゆるめ

ボルト:きつめ (Dingwall Z3-6)
オーディオファイル - ボルト:きつめ

トルクマネージメント、中々侮れないかもです。

<関連リンク>
Freedom Custom Guitar Research

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